取手グリーンスポーツセンター

スタッフブログ

2024-05-05:汗をかくのは人間だけ? 熱中症対策について

緑鮮やかな気持ちの良い季節になってきました。晴れた日には屋外に出て運動してみたいと感じるも多いのではないでしょうか。健康相談室の永松です。この時期は、気温も次第に高くなってきます。今回は、熱中症対策についてお話します。

 

 

人間の身体には、ホメオスタシス(恒常性)という機能が備わっていて、常に体温や体内の化学物質の濃度などを一定の状態に保とうとしています。ホメオスタシスのおかげで、人間は暑い場所や寒い場所、高所や水中などに行っても身体の状態を維持できるのです。ホメオスタシスは、環境の変化に合わせてホルモン分泌や身体の形状などを少しずつ変化させておこるので、新しい環境に慣れるまでにしばらく時間がかかります。長い冬が終わり、夏に向かって次第に暑くなってくるこの時期、私たちの身体は、寒い環境に適した状態から、暑い環境に適した状態に、時間をかけて変わろうとしているのです。

 

それでは実際に、私たちの身体は、どのようにして暑い場所でも機能を維持しようとするのでしょうか? 皆さん、ご自分の平熱は何度かご存じですね? ほとんどの方の平熱は、36度から37度くらいではないかと思います。この温度は、身体の中の化学反応が一番起こりやすい温度なので、人間は身体の奥の方の体温(深部体温)を常にこの温度に維持しようとします。それよりも体温が上がったり、下がったりすると、私たちの身体は、何とかして平熱に戻そうとするのです。

 

暑い場所に長時間いると、まずは身体の表面の温度が上がり、それにつられて深部体温も上がります。深部体温が平熱の範囲を上回ると、体温を下げる仕組みが人間には主にふたつ備わっています。それが、身体の表面の毛細血管の拡張と発汗です。身体の表面に血液を送り、皮膚から汗をかくことによって、水分が蒸発するときに奪われる熱(気化熱)で、血液の温度を下げます。そして、冷却された血液が、身体の内部に送られることで深部体温を下げるのです。

 

すごい仕組みですね! ちなみに、汗をかくことができる生き物は人間だけだそうです。犬の散歩をされる方は、ご自分のワンちゃんが暑い日に口を大きく開けてハアハアしているのを見たことがあるのではないでしょうか? 汗をかくことができない犬達は、湿っている舌から水分を蒸発させることで、体温を下げようとしているのです。アスリートは、国際競技大会などで夏場にマラソンを走ることもありますが、暑い日に自分の体温を下げながら長時間動き続けることができるのは、数ある生き物の中でも人間だけなのです!

 

ここからは、熱中症対策についてお話しします。熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。先ほどお話ししたホメオスタシスが維持できなくなってしまうと発症します。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡することもあります。

 

身体が暑さに慣れることを暑熱馴化(しょねつじゅんか)と言いますが、まだ暑さが比較的穏やかな初夏のこの時期に熱中症が多く発症するのは、暑熱馴化がまだ十分にできていないためです。そのため、身体が暑さに慣れるまでの期間は、無理をしないことが大切になります。屋内では扇風機やエアコンで温度を調節したり、屋外で運動する場合は通気性の良いウェアや帽子を着用したりするなどの対策もお願いします。氷や冷たいタオルなどで身体を冷やす場合は、くび筋やわきの下、太ももの付け根など、太い血管が通っているところを冷やすと、身体にこもった熱を逃がしやすいです。

 

そして、もうひとつ注意して頂きたいのが水分補給です。人間は、1日に23リットルの水分を捕ることが必要とされていますが、これには野菜などに含まれている水分も含みます。夏場の発汗量が多い時期には、これ以上の水分補給が必要となります。水分補給にもいくつかコツがあります。まずは、のどが乾く前に水分補給をすることです。のどが乾いたと感じた時には、既にかなり体内の水分が不足しているので、そうなる前に早めに水分を捕ることで身体の負担を軽くすることができます。また、水分補給はこまめに行ってください。身体が一度に吸収できる水分量は限られているので、吸収できなかった水分は排泄されてしまいます。

 

体内の水分が不足している時は、スポーツドリンクを飲むことをお勧めします。スポーツドリンクには、適度に塩分や糖分が含まれていて、身体への水分の吸収やエネルギー補給を助けてくれます。汗をかくと体内の水分だけでなく塩分も失われます。塩分を適度に含んだ飲料を飲むと、浸透圧の働きで水分が体内に止まりやすくなります。塩分が含まれているタブレットを水と一緒に飲むのも効果的です。

 

また、熱中症に特に注意して頂きたい方がいます。まずは、お子様。子どもは体温の調節能力が十分に発達していない場合があるので、気を配ってください。次に、ご高齢の方。高齢者は暑さや水分不足に対する感覚や身体の調整機能が低下している場合があるので、注意が必要です。障がいをお持ちの方も、熱中症になっても自ら症状を訴えられない場合があるため、配慮が必要です。

 

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。身体のしくみや健康のための運動のしかたについて、より詳しく知りたい方は、健康相談室へお越しください。上手に運動して、これからの暑い季節を元気に乗り越えましょう!

 

【参考】

熱中症を防ぐために知っておきたいこと 熱中症予防のための情報・資料サイト,厚生労働省

藤井直人,ランナーのカラダのなか 運動生理学が教える弱点克服のヒント,2023年,小学館

<一覧へ戻る>